転職の面接対策というと、質問への答え方を準備することだと思われがちです。想定問答を並べて、言い回しを整える。それも必要な作業ではあります。
ただ、採用する側から見ると、面接で確かめていることは思ったより少なく、だいたい3つに集約されます。筆者は外国人材の採用に、企業側と候補者側の両方から関わっています。日々の仕事で見聞きするかぎり、日本人を採るときも外国人を採るときも、見ているものはあまり変わりません。
ここでは、その3つが何であるかと、なぜ採る側がそれを見たがるのかを書きます。答え方ではなく、答えの背景にある事情のほうです。
面接で見られているのは一貫性・再現性・志望度の3つ
転職エージェントが配っている選考対策シートを見ると、この3つはほぼ共通して挙がっています。言葉づかいに違いはあっても、確かめたいことは同じ。
- 一貫性|これまでの選択と、これからの志向が筋の通った話になっているか
- 再現性|入社後に活躍し、壁を乗り越えられそうかを過去の行動から判断できるか
- 志望度|自社を理解したうえで、自分の軸との重なりを語れているか
一貫性を見るのは、話が繋がらない人が早期に辞めるからです
面接官が「なぜ新卒でその会社を選んだのですか」と聞くとき、過去そのものに興味があるわけではありません。過去・現在・未来を並べたときに、線が繋がるかどうかを見ています。
なぜそこを気にするのか。線が繋がらない人ほど、入社後に「思っていたのと違う」となりやすいから。
採用が失敗したときのコストは、採る側にとってかなり重いものです。募集にかけた費用、面接に使った時間、受け入れ部署が育成に割いた工数。それらが回収できないまま、また同じ募集を出し直すことになる。人事の立場で言えば、決裁を通した案件が半年で白紙になるということでもあります。
だから一貫性の質問は、能力を測るためというより、ミスマッチの予兆を探す作業に近いのです。
整理の仕方としては、未来から遡るのが分かりやすいと思います。今回何を求めて転職するのか。現職には何を求めて入ったのか。その前は何を求めたのか。並べてみて、求めてきたものに共通の芯があれば、それが一貫性です。
逆に言えば、転職回数が多いこと自体は決定的な問題ではありません。回数ではなく、その選択に説明がつくかどうかが見られています。
再現性を見るのは、過去の行動からしか未来を推測できないからです
面接は長くても1時間程度です。その中で「この人は入社後に成果を出せるか」を判断しなければなりません。
短時間で未来の活躍を見抜く方法は、実際のところありません。だから採る側は、過去に似た状況でどう動いたかを聞き、そこから推測します。これが再現性です。
「実績を教えてください」と聞かれたときに、数字だけを答えて終わる人がいます。売上を何パーセント伸ばした、という話です。ただ採る側が知りたいのは数字そのものではありません。その数字が出るまでに何をしたのかのほうです。
状況があり、課題があり、打った手があり、結果が出た。この順で話されると、聞き手は自社の状況に置き換えて考えられます。逆に結果だけを渡されると、環境が良かっただけかもしれない、という疑いが残ります。
会社から与えられた目標ではなく、自分で高い目標を設定して動いた話であれば、なお伝わりやすいでしょう。指示があれば動ける人と、指示がなくても動ける人では、受け入れ側の負担がまったく違うからです。
志望度を見るのは、内定辞退が採用計画そのものを壊すからです
3つの中で、求職者側がいちばん軽く見がちなのが志望度だと思います。「熱意を見せろということでしょう」と受け取られやすい。
ただ採る側の事情は、もう少し即物的です。内定を出して辞退されると、その枠が埋まらないまま次の期に持ち越しになります。中途採用は欠員補充であることが多く、現場は人が足りないまま待っている状態です。辞退の連絡は、その現場にもう一度「まだです」と伝えることを意味します。
そのため面接官は、志望度の高さそのものよりも、辞退のリスクがどれくらいあるかを測っています。会社への理解が浅いまま「御社が第一志望です」と言われても、判断材料にはなりません。
効くのは、自分の転職の軸を先に示したうえで、その軸とこの会社が重なる部分を具体的に挙げることです。軸のない志望動機は、どの会社にも当てはまってしまう。
3つを貫いているのは「他律」と「自律」の2つの軸
選考対策シートの類を読んでいると、どの設問にも共通して出てくる整理の仕方があります。他律と自律です。
- 他律|誰に対して、どんな価値を与えたいのか
- 自律|自分がどう成長して、どんな力を身につけたいのか
どちらか一方に寄ると、受け取られ方が偏ります。自律だけを語ると「自分の成長のために会社を使うのだな」と読まれ、他律だけを語ると「きれいごとで、本音が見えない」と受け取られます。
両方を並べて答える。それだけで、答えの厚みが変わります。
外国人材の採用でも、見ているものは同じです
ここまで日本人の中途採用を前提に書いてきましたが、筆者が仕事で関わる外国人材の採用でも、企業が確かめようとしていることは変わりません。
なぜ日本で働きたいのか、なぜこの仕事なのか(一貫性)。母国での経験は日本の現場で活きるのか(再現性)。すぐ辞めて他社へ移らないか(志望度)。聞き方は違っても、不安の中身は同じ。
むしろ外国人材の場合、企業側の不安はより強く出ます。在留資格の手続きに費用と時間がかかり、受け入れ体制の整備も必要になるため、失敗したときの損失が大きいからです。
つまりこの3観点は、日本の採用における共通の言語だと考えてよさそうです。国籍が変わっても、採る側が抱える不安の構造は変わりません。
よくある質問
転職回数が多いと、それだけで不利になりますか
回数そのものより、説明がつくかどうかが見られています。それぞれの転職で何を求めて動いたのかを並べたときに、共通の芯があれば一貫性として受け取られます。逆に回数が少なくても、現職を選んだ理由と今回の理由が食い違っていれば、そこを掘られるでしょう。
ネガティブな転職理由は、正直に話してよいのでしょうか
事実を伏せる必要はありませんが、不満で終わらせないほうが伝わります。現状から離れたい理由を述べたら、自分で取り組んだこと、それでも足りなかったもの、だからどんな環境が必要なのか、という順で続けます。会社への評価ではなく、自分の意思決定の説明として話す。ここがポイントになります。
実績に自信がない場合はどうすればよいですか
再現性は成果の大きさではなく、行動の質から判断されます。目立つ数字がなくても、課題をどう捉え、何を試し、何が変わったのかを具体的に話せれば材料になります。うまくいかなかった経験でも、そこから何を変えたかまで話せるなら十分に評価の対象になるでしょう。
「第一志望です」と言い切ったほうが有利ですか
言い切るかどうかより、なぜそう思うのかを説明できるかが見られています。会社への理解が浅いまま断言しても、辞退リスクの判断材料にはなりません。自分の転職の軸を先に示し、その軸とこの会社が重なる部分を具体的に挙げる。そのほうが効きます。
面接対策は、答えの丸暗記より背景の理解から
質問の数を覚えようとすると、想定外の一問で崩れます。一方で、採る側が何を不安に思っているかが分かっていれば、聞かれ方が変わっても答えの軸はぶれません。
一貫性はミスマッチへの不安、再現性は活躍できるかへの不安、志望度は辞退への不安。面接の質問は、だいたいこの3つのどれかに紐づいています。
次に面接の準備をするときは、想定問答を増やす前に、自分の話がこの3つにどう答えているかを点検してみてください。

