2026年7月に、ハローワークで事務の仕事を探していた人は498,941人。同じ月に出ていた事務の求人は181,696件でした。倍率にすると0.36倍で、3人に1つしか席がありません。
ところが、事務職として働いている人の数は減っていません。10年で186万人増えています。同じ10年で26万人減ったのは、求人倍率4.99倍の建設・採掘のほうでした。
AIが事務を減らしている、という話は半分だけ合っています。減っているのは求人の側で、事務に集まる人はむしろ増え続けている。その二つが同時に起きているから、0.36倍という数字になります。
筆者は外国人材の採用に、企業側と候補者側の両方から関わっています。事務が減った会社が次に何へ決裁を出すのかを、手前の席で見る仕事です。ここでは「AIに仕事を奪われるか」を語る前に、公的統計に出ている事務職の実数を確かめます。
事務は0.36倍、建設・採掘は4.99倍という開き
厚生労働省の一般職業紹介状況は、全体の倍率だけでなく職業別の内訳も出しています。2026年7月分の参考統計表から、主な職業を抜き出しました。
| 職業 | 有効求人(件) | 有効求職(人) | 有効求人倍率 |
|---|---|---|---|
| 職業計 | 2,038,005 | 1,949,781 | 1.05倍 |
| 事務従事者 | 181,696 | 498,941 | 0.36倍 |
| うち一般事務従事者 | 120,593 | 415,773 | 0.29倍 |
| 販売従事者 | 181,052 | 97,988 | 1.85倍 |
| 生産工程従事者 | 201,637 | 127,040 | 1.59倍 |
| 輸送・機械運転従事者 | 123,726 | 59,922 | 2.06倍 |
| サービス職業従事者 | 481,897 | 185,353 | 2.60倍 |
| うち介護サービス職業従事者 | 202,170 | 52,900 | 3.82倍 |
| 建設・採掘従事者 | 115,596 | 23,143 | 4.99倍 |
| 保安職業従事者 | 98,215 | 15,011 | 6.54倍 |
ニュースの見出しになる有効求人倍率は、季節調整をかけた全体の数字です。職業別に割ると、開きは20倍を超えます。一般事務が0.29倍、保安職業が6.54倍です。「人手不足」という一語で括られている中身は、職業によってまったく別のものだということ。
動きの向きも逆です。前年同月と比べると、事務従事者は有効求人が6.6%減って有効求職は2.1%増えました。一般事務にかぎれば求人7.1%減、求職1.7%増です。求人が減り、探す人が増えている。
反対に、建設・採掘の新規求人は5.0%増、保安職業の有効求人は7.5%増、生産工程は3.0%増でした。求人全体が前年より減っているなかで、この3つは増えています。
なぜ求人そのものが減っているのか。賃上げより省力化への投資が先に選ばれる構造は、こちらにまとめました(人手不足なのに賃金が上がらない理由)。
ところが、事務職の人数はまだ減っていない
求人の話と、実際に働いている人の話は別です。総務省の労働力調査で職業別の就業者数を10年並べると、思っているのと逆の絵が出ます。
| 職業 | 2015年 | 2025年 | 10年の増減 |
|---|---|---|---|
| 専門的・技術的職業従事者 | 1,059万人 | 1,352万人 | +293万人 |
| 事務従事者 | 1,262万人 | 1,448万人 | +186万人 |
| サービス職業従事者 | 790万人 | 862万人 | +72万人 |
| 販売従事者 | 856万人 | 806万人 | -50万人 |
| 生産工程従事者 | 887万人 | 844万人 | -43万人 |
| 建設・採掘従事者 | 299万人 | 273万人 | -26万人 |
事務従事者は10年で186万人増えました。就業者全体に占める割合も19.7%から21.2%へ上がっています。減っているのは建設・採掘、生産工程、販売のほうです。
すると、事務0.36倍という数字の読み方が変わります。事務職が消えたから席が足りないのではなく、事務職に人が集まり続けているから足りない。求人が前年より6.6%減り、求職が2.1%増えたのも、その延長線上の動きです。
建設・採掘の4.99倍も同じ構造の裏返しです。10年で26万人減った職業に、いまも求人だけが残っている。人手不足という言葉が指しているのは、たいていこちら側です。
なお、職業別の就業者数は年平均でしか公表されないため、直近は2025年平均が最新になります。2026年に入ってからの動きは、まだこの表には出ていません。
言い方を変えると、同じ席を何人で取り合うかが変わったということです。その席で採る側が何を確かめているかは、こちらに書きました(転職の面接で見られている3つ)。
国の推計では、2040年に事務職が437万人余る
先を見た推計も出ています。経済産業省が2026年3月に産業構造審議会へ提出した「2040年の就業構造推計(改訂版)」は、職種別の需給ギャップを万人単位で置いています。
前提は、十分な国内投資と産業構造の転換が実現した場合。就業者数は2022年の約6,700万人から2040年に約6,300万人へ減りますが、AI・ロボット等の利活用やリスキリングで労働需要が効率化されるため、全体では大きな不足は生じないという見立てです。ずれるのは職種の間でした。
| 職種 | 2022年の就業者数 | 2040年の需要 | 2040年の供給 | 過不足 |
|---|---|---|---|---|
| 専門職 | 1,288万人 | 1,867万人 | 1,686万人 | 181万人の不足 |
| うちAI・ロボット等の利活用を担う人材 | 236万人 | 782万人 | 443万人 | 339万人の不足 |
| 事務職 | 1,455万人 | 1,039万人 | 1,476万人 | 437万人の余剰 |
| 現場人材 | 3,637万人 | 3,283万人 | 3,023万人 | 260万人の不足 |
| うち生産工程従事者 | 835万人 | 731万人 | 525万人 | 206万人の不足 |
事務職だけが余ります。しかも余る量が、現場人材の不足分260万人より大きい。数のうえでは、事務から現場へ全員が移っても、まだ事務側に人が残る計算になります。
厄介なのは、余る場所と足りない場所が地理的に離れていることです。同じ資料の地域別では、関東の一都三県が193万人の余剰で、その多くを事務職が占めます。一方、関東の一都三県以外は89万人、東北は53万人、北海道は41万人、九州は31万人の不足でした。余っているのは東京圏の事務職、足りないのは地方の現場という形。
よくある質問
事務職はなくなるのですか
2026年7月時点で、ハローワークに出ている事務従事者の求人は181,696件あります。ゼロにはなっていません。倍率が0.36倍と低いのは、同じ月に事務を希望する求職者が498,941人いるためです。経済産業省の2040年推計でも事務職の需要は1,039万人残る見通しで、消えるというより席の数と希望者の数が合わない状態が続く、と読むほうが実態に近いでしょう。
求人サイトを見ると事務の募集はたくさんあります
募集の件数と、入れる確率は別の話です。事務従事者の有効求人は前年同月比6.6%減、有効求職は2.1%増で、1つの求人に対する競争は前年より厳しくなっています。掲載が続いている求人は、応募が集まらないから残っているとはかぎりません。集まりすぎて選別に時間がかかっている求人も、同じように掲載され続けます。
2040年に437万人余るというのは、いま事務で働いている人が余るということですか
経済産業省の推計は、2040年の事務職の労働需要を1,039万人、供給を1,476万人と置いています。その差が437万人です。2022年の事務職の就業者数は1,455万人なので、需要のほうが400万人あまり小さくなる形。ただしこれは職種ごとの過不足を並べた推計であって、特定の誰かが退職するという意味ではありません。同じ資料では現場人材が260万人不足し、余剰の多くが関東の一都三県(193万人)に集まるとされています。余る場所と足りない場所が離れている、というほうが推計の中身に近い読み方です。
では、事務にいた人はどこへ動くのか
事務の有効求人は前年より6.6%減り、探す人は2.1%増えました。それでも事務職の実数は10年で186万人増えています。AIがいま削っているのは、働いている人ではなく席のほうです。
国の推計は、2040年に事務職が437万人余り、現場人材が260万人足りないと置いています。余るのは東京圏の事務職で、足りないのは地方の現場。数のうえでは事務から現場へ全員が移ってもまだ余りますが、実際に移るかどうかは別の話です。
では、事務にいた人はどこへ動くのか。動いた先で何が待っているのか。現場の賃金は月ではなく日で数えられていて、採る側には社内で動かす以外の選択肢もあります。その先は後編で追いかけます。
事務にいた人が現場へ動いたときに何が変わるのかは、続きの記事「事務から現場へ動くと何が変わるか|日額という単位と、採る側が選んでいる4つ」で書いています。
出典
- 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年7月分)」参考統計表(2026年8月28日公表)
- 総務省統計局「労働力調査(基本集計)」長期時系列表6
- 経済産業省「2040年の就業構造推計(改訂版)」(2026年3月、産業構造審議会経済産業政策新機軸部会 参考資料)
※本稿は2026年9月10日時点の公開情報にもとづきます。

