育成就労に「航空」分野が追加される方向|枠は4,900人のまま、300人を特定技能から振り替え

外国人材の活用
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育成就労の対象に「航空」を加える案が、2026年9月9日の有識者会議に示されました。ただし、航空分野の受け入れ上限は4,900人のままで、±0です。特定技能1号の枠から300人を差し引き、その300人を育成就労へ回す、という中身になっています。

筆者は外国人材の採用に、企業側と候補者側の両方から関わっています。「航空が追加された」という見出しだけを見ると採用枠が広がったように読めますが、机の上に置き直すと、増えたのは枠ではなくどちらの制度で採るかという選択肢のほうです。

ここでは出入国在留管理庁が同日に配布した資料をもとに、数字の中身と、空港のグランドハンドリングを担う事業者にとって何が変わるのかをまとめます。まだ決定ではありません。閣議決定は12月をめどに予定されている段階です。

決まったのは方向で、閣議決定は12月をめどとされています

2026年9月9日に開かれたのは、第14回の「特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議」です。ここで示されたのは、令和8年度の分野別運用方針の改正に向けて作業を始めるという案でした。

配布資料の書きぶりも、決定ではありません。受入れ対象分野・業務区分の一覧には、航空分野の欄に「航空分野は育成就労産業分野の設定を検討中」と注記されています。同じ資料に添えられたスケジュール表では、有識者会議と専門家会議での議論を経て、12月に関係閣僚会議・閣議決定で分野別運用方針が決まる流れが示されています。

育成就労制度そのものが始まるのは、2027年4月1日です。航空分野で実際に受け入れが動くのは、その先になります。

なお、今回追加が検討されているのは航空だけではありません。工業製品製造業では板ガラス加工とガラス溶融成形の業務区分、漁業では水産物産地卸売市場業の業務区分が新たに検討されています。分野そのものが育成就労に加わるのは航空です。これで育成就労の対象は、17分野から18分野になります

受け入れの上限は4,900人のまま、1人も増えていません

今回の案でいちばん実務に効くのが、この数字です。

航空分野受入れ見込数今回の増減
特定技能1号4,600人−300人
育成就労300人+300人
分野全体4,900人±0
出入国在留管理庁「令和8年度 特定技能制度及び育成就労制度の分野別運用方針の改正に向けた作業開始について」(第14回有識者会議 資料3-1)の受入れ対象分野・業務区分一覧(案)より

特定技能1号を300人減らし、育成就労に300人を置く。合計は動きません。全分野の合計でも同じで、特定技能1号が805,400人(−300)、育成就労が426,500人(+300)、総計1,231,900人で±0です。今回の改正案は、外国人材の受け入れ数そのものを増やす提案ではありません。

採用する側から見ると、意味はこうなります。航空分野で使える人数の上限は変わらないまま、その上限のなかに「3年かけて育てる枠」が300人分できる。枠の奪い合いが緩むわけではなく、同じ枠をどちらの制度で使うかという判断が新しく発生します。

4,900人は「なお不足する」と計算された人数そのものです

4,900人という枠がどこから来た数字なのかは、令和8年1月23日に閣議決定された航空分野の運用方針に書かれています。

  • 令和10年度に必要な就業者数は5万1,500人と見込まれる
  • そのままだと1万5,300人程度の人手不足が生じる見込み
  • 生産性向上(令和10年度までに2,400人程度)と国内人材の確保(同8,000人程度)で、1万400人程度は緩和される
  • それでも4,900人程度の不足が残る

つまり4,900人は、余裕を見て置かれた定員ではありません。引き算の答えがそのまま枠になっています。令和6年度の航空分野の主な職種の有効求人倍率は3.95倍で、うち陸上荷役・運搬作業員や旅客・貨物係事務員などは3.99倍。足りていないという前提そのものは、資料の側にも数字で書かれています。

対象になるのは空港グランドハンドリングだけです

航空分野の業務区分は2つあります。空港グランドハンドリングと、航空機整備です。このうち育成就労の業務区分として設定が検討されているのは、空港グランドハンドリングのみで、航空機整備は入っていません。

育成イメージの資料では、空港グランドハンドリングの区分に5つの「主たる技能」を設定する案が示されています。

  • 手荷物・貨物の航空機搭降載業務|ULDの移送、航空機ドアの開閉、出発手荷物の選定確認・仕分け、到着手荷物の取扱いなど
  • 手荷物取扱業務|個数・行先・外装ダメージの確認、手荷物タグの確認、種類に応じた仕分け、一時保管と搬出補助など
  • 貨物取扱業務|貨物の選定・確認・仕分け、ネット掛け、積付と解体、固縛作業など
  • 航空機内清掃業務|エコノミークラスの清掃、ハンディークリーナー掛け、ギャレー清掃、ラバトリー清掃など
  • 旅客取扱業務|保安検査場内の案内、旅客案内と乗り継ぎ案内、車椅子や電動カートの操作、アサイン管理など

育成の設計も示されています。1年目は補助作業や初歩的な取扱い、2〜3年目で基本的な取扱いに加えて安全や航空保安に関する知識が必要な業務へ、という組み立てです。技能評価試験は、この5つそれぞれについて育成就労評価試験(初級・専門級)を新規に作成する予定とされています。

空港グランドハンドリングは技能実習の職種としても1職種3作業が対応しており、まったくの新設ではありません。それでも試験は作り直しになるため、受け入れの入口が整うのは制度施行に向けた準備が進んだ後になります。

同じ現場を、特定技能で採るか、育成就労で採るか

ここが、この件のいちばん実務的な論点です。同じ空港グランドハンドリングの仕事に、2つの入口ができます。

項目特定技能1号(いまも使える)育成就労(航空は検討中)
受入れ見込数4,600人300人
位置づけ相当程度の知識・経験がある人を即戦力で受け入れる3年の就労を通じて特定技能1号の水準まで育てる
入口の要件航空分野特定技能1号評価試験(空港グランドハンドリング)に合格、日本語はA2.2相当以上就労開始前にA1相当が制度共通の前提で、航空分野の上乗せは分野別運用方針が決まってから
在留の長さ通算5年が上限原則3年
転職・転籍同一の業務区分内など、範囲を定めて可能本人意向の転籍は条件つきで可能(転籍制限期間は分野ごとに1年から2年で設定)
受け入れ側の体制支援計画の作成と実施(全部を登録支援機関に委託できる)監理支援機関と組み、育成就労計画の認定を受ける

育成就労のほうが手前の負担は重くなります。監理支援機関を決め、育成就労計画の認定を取り、日本語講習の担い手を確保し、3年分の育成を設計する。そのうえで在留の長さは原則3年です。入り口の手間は大きく、在留は短い。この2つが同時に来ます。

それでも育成就労を選ぶ理由があるとすれば、特定技能1号の試験に通る人をいま採れるかどうか、という一点でしょう。試験合格者を探して4,600人の枠を取り合うのか、未経験の人を3年かけて自社の現場に合わせて育てるのか。転籍の条件や日本語要件の中身は技能実習から育成就労で何が変わるかにまとめています。

航空の特定技能1号は、日本語がA2.2相当以上です

見落とされやすいのが、航空分野の日本語水準です。

航空分野の運用方針は、1号特定技能外国人に求める日本語能力水準を「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上と定めています。2号のほうはB1相当以上です。空港内という現場の性質を考えれば自然な設定ですが、制度全体の一般的な水準よりは一段上にあります。

一方、育成就労の日本語は、就労開始前にA1相当、3年間でA2相当の到達を目標とするのが制度共通の枠組みです(育成就労の日本語要件)。航空分野でこれに上乗せがかかるのかどうかは、12月の分野別運用方針が決まるまで分かりません。

ここは受け入れの設計に直接効いてきます。3年の育成就労を終えた人が航空分野の特定技能1号へ進むには、日本語の到達点をどこに置くかが先に決まっていないと計画が引けません。12月の分野別運用方針で最初に見るべきは、人数より日本語の水準と転籍制限期間だと考えています。

枠は、埋まれば止まります

4,900人という上限が、形式的な数字ではないことは、同じ9月9日の会議で報告されています。特定技能の外食業分野についての議題です。

外食業の受入れ見込数は5万人でした。令和8年2月末時点の在留者数が約4万6千人(速報値)に達し、同年5月中に上限へ届くと推計されたため、2026年4月13日以降に受理した在留資格認定証明書の交付申請は不交付という措置が取られました。在留資格変更も、措置日以降に受理したものは原則不許可です。在留期間の更新だけは、在留者数が増えないため継続して許可されています。

再開の時期は未定とされ、受入れ見込数の再設定は令和10年度末が見込みとして示されています。外食業では、従業者約413万人のうち外国人労働者が約27.3万人、そのうち特定技能は約4.8万人という規模です。

航空分野の運用方針にも同じ規定があります。国土交通大臣が在留者数や有効求人倍率などの指標で人手不足の状況を把握し、受入れ見込数を超えることが見込まれる場合には、法務大臣に交付停止を求める。4,900人は、埋まればそこで止まる数字です。制度上は使えるという話と、いま採れるという話が別物である点は、特定技能と技人国、どちらで採用すべきかでも触れました。

12月までに見ておきたいこと

航空分野で人を入れている、あるいは検討している事業者にとって、いまの段階でできることは多くありません。決まっていないものは動かせないからです。それでも、12月の閣議決定を待つあいだに確かめておける材料はあります。

1. 自社の業務が5つの主たる技能のどれに当たるか

搭降載、手荷物、貨物、機内清掃、旅客取扱い。育成就労では、この単位で育成計画を組み、試験を受けることになります。実際の現場はこれらをまたいで回っていることが多いので、どこを主たる技能に置くかは先に見当をつけておくほうが早いでしょう。

2. 組む相手が監理支援機関の許可を取っているか

育成就労では、これまでの監理団体に代わって監理支援機関が受け皿になります。許可は取り直しで、申請は2026年4月15日から始まっています。受け皿が許可を得ていなければ、育成就労計画の認定も進みません。育成就労計画の認定申請そのものは2026年9月1日から受け付けが始まっており、この段取りは育成就労の計画認定申請が9月1日開始に書いたとおりです。

3. 特定技能1号の枠が、いまどれだけ残っているか

4,600人に対して、実際の在留者数がどこまで来ているか。入管庁が分野別の充足率を公表しているので、そこで確認できます。育成就労の300人を待つより、特定技能で採ったほうが早いのか。それとも枠が心もとないのか。判断の材料はここにあります。

空港の現場が人で埋まらないという話は、航空分野だけの事情ではありません。事務の求人は余っていて、現場の求人は埋まらない。日本人だけでは埋まらない席に何を入れるかという選択のひとつが、外国人材です(事務から現場へ動くと何が変わるか)。

300人という数字が示しているもの

育成就労に航空が入る、というニュースは、受け入れが広がる話として読まれやすいと思います。ただ資料の数字は、4,900人が4,900人のままであることを示しています。特定技能1号から300人を抜いて、育成就労へ置き直しただけです。

変わるのは、採る側の選択肢の形のほうです。試験に合格した人を即戦力で迎える道と、未経験の人を3年かけて育てる道が、同じ4,900人の枠のなかに並びます。前者は入口が軽く在留が長く、後者は入口が重く在留が短い。どちらを選ぶかは、自社の現場に育てる余力があるかどうかで決まります。

そして、この案はまだ決まっていません。閣議決定は12月をめど、制度の開始は2027年4月です。いま見ておくべきなのは、300人という配分より、そこに乗る条件のほうだと思います。

よくある質問

育成就労に航空分野が追加されることは決定したのですか

決定していません。2026年9月9日の第14回有識者会議に、航空分野を育成就労産業分野として設定する案が示された段階です。出入国在留管理庁の配布資料にも「航空分野は育成就労産業分野の設定を検討中」と注記されています。分野別運用方針の決定は、関係閣僚会議と閣議決定で12月をめどに予定されています。

航空分野で受け入れられる人数は増えるのですか

増えません。航空分野の受入れ見込数は4,900人で変わらず、内訳が特定技能1号4,600人(−300)と育成就労300人(+300)に組み替えられる案です。全分野の合計でも1,231,900人で±0となっています。

航空機整備でも育成就労を使えるようになりますか

今回の案では対象外です。航空分野の業務区分は空港グランドハンドリングと航空機整備の2つですが、育成就労の業務区分として設定が検討されているのは空港グランドハンドリングのみです。航空機整備は引き続き特定技能での受け入れになります。

航空分野の転籍制限期間や日本語の水準はいつ分かりますか

分野別運用方針が決まってからです。転籍制限期間は分野ごとに1年から2年の範囲で定められ、日本語の水準も分野別運用方針で上乗せされることがあります。航空分野の特定技能1号については、現行の運用方針で日本語がA2.2相当以上と定められています。個別の受け入れ可否や在留資格の該当性は、行政書士や弁護士、または地方出入国在留管理官署にご確認ください。

個別の判断について

本稿は制度の一般的な解説です。個別の案件について、在留資格に該当するかどうかの判断や申請の可否をお答えすることはできません。具体的な事案は、行政書士や弁護士、または住居地を管轄する地方出入国在留管理官署にご相談ください。制度の全体像についてのご質問はお問い合わせからお送りいただければ、一般的な範囲でお答えします。

出典

  • 出入国在留管理庁「第14回 特定技能制度及び育成就労制度の基本方針及び分野別運用方針に関する有識者会議」(2026年9月9日)配布資料
  • 出入国在留管理庁・厚生労働省「育成就労制度 運用要領 〜関係者の皆さまへ〜」(令和8年8月)

※本稿は2026年9月16日時点の公開情報にもとづきます。数字は第14回有識者会議の資料3-1(分野別運用方針の改正に向けた作業開始について)、資料3-2(育成就労制度の受入れ対象分野 育成イメージ)、資料3-3(技能評価試験の整備予定一覧)、資料4-1から4-3(外食業分野の受入れ見込数の上限超過への対応)、および資料1(特定技能・育成就労の運用方針/令和8年1月23日閣議決定)の航空分野の別紙によります。

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