特定技能と技人国、どちらで採用すべきか|要件・在留期間・転職可否を比較

外国人材の活用
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外国人材の採用でどの在留資格を使うかは、任せたい仕事の中身で決まります。制度の比較表をいくら眺めても決まりません。先に仕事を固めて、その仕事に合う在留資格を選ぶ、という順番になります。

筆者は外国人材の採用に、企業側と候補者側の両方から関わっています。「特定技能と技人国、どちらがいいですか」という質問は本当に多いのですが、話を聞いていくと、迷っているのは制度ではないことがほとんどです。任せたい業務が固まっていない。だから決められない。

ここでは両制度の違いを一次情報で整理したうえで、「自社がこの状況ならこちら」という分岐まで書きます。数字は2026年9月10日時点で公表されている資料によります。

選択を決めるのは、任せたい仕事の中身です

技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)に該当するのは、出入国在留管理庁の表現を借りれば「学術上の素養を背景とする一定水準以上の専門的能力を必要とする活動」です。特定技能1号のほうは、19分野それぞれに定められた業務区分のなかで「相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務」に従事する在留資格。

現場の作業そのものを任せたいなら特定技能、専門的な判断や知識を使う仕事なら技人国です。どちらでも通せる仕事は、原則としてありません。選択肢が2つあるのではなく、仕事の中身が先に答えを決めています。

制度の違いを一覧で押さえる

項目特定技能1号技術・人文知識・国際業務
対象になる仕事19分野に定められた業務区分の範囲内自然科学または人文科学の分野に属する技術・知識を要する業務、外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務
主な要件技能試験と日本語試験に合格(技能実習2号を良好に修了した人は免除)、18歳以上業務に必要な技術・知識に関連する科目を専攻して卒業、または10年以上の実務経験
報酬日本人と同等額以上日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上
在留期間通算5年が上限(相当の理由があると認められる場合は6年)5年・3年・1年・3月のいずれかで、更新の回数に上限なし
家族の帯同基本的に不可(2号は可能)可能(配偶者と子は「家族滞在」)
受入れ側の支援義務支援計画の作成と実施が必要(全部を登録支援機関に委託できる)なし
転職同一の業務区分内、または試験等で技能水準の共通性が確認されている業務区分間同じ在留資格に該当する業務であれば可能
人数の上限分野ごとの受入れ見込数が上限で、企業単位の人数枠は介護分野と建設分野を除いてなしなし

国際業務のほうは要件が別に定められていて、翻訳・通訳・語学の指導・広報・宣伝・海外取引業務などに従事し、関連する業務の実務経験が3年以上あることが必要です。大学を卒業した人が翻訳・通訳・語学の指導に就く場合は、実務経験は求められません。

技人国の線引きは、活動の全体で判断されます

入管庁が公表している「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について(最終改定 令和8年4月)には、対象にならない業務が具体的に書かれています。求人の採用基準に「未経験可、すぐに慣れます。」と記載があるような業務内容。学歴または実務経験の要件を満たしていない日本人従業員が一般的に従事している業務内容。この2つは対象外だと明記されています。

効いてくるのは判断の単位のほうです。同じ文書に、在留期間中の活動を全体として捉えて判断するとあります。専門業務が全体のごく一部で、残りが特段の技術・知識を要しない業務や反復訓練によって従事可能な業務であれば、該当しないと判断されます。「専門業務も含まれています」では通りません。

2026年4月には、主に言語能力を用いる対人業務についての取扱いが追加されました。この場合はCEFR・B2相当の言語能力を有していることが前提とされ、満たさなければ「一定水準以上の業務」に従事するものとは認められません。日本語ならJLPT・N2以上などが該当し、所属機関がカテゴリー3または4に当たる企業は申請時に証明資料が要ります。通訳や翻訳での採用を考えているなら、ここが新しい関門です。

特定技能は、分野と業務区分の枠から出られません

特定技能の対象は、令和8年1月23日の閣議決定を経て19分野になりました。介護、ビルクリーニング、リネンサプライ、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、物流倉庫、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業、資源循環です。物流倉庫と資源循環は、上乗せ基準告示の公布・施行後に受入れが始まる予定とされています。

入口に試験があるのも技人国との違いです。技能試験と日本語試験の合格が求められ、技能実習2号を良好に修了した人は免除されます。日本語の水準がどう決まるかは育成就労のほうが読み解きやすいので、育成就労の日本語要件もあわせてどうぞ。

受入れ側に義務が乗るのも特定技能の特徴です。1号特定技能外国人には支援計画の作成と実施が求められ、事前ガイダンス、住居確保、生活オリエンテーション、3か月に1回以上の定期面談など、省令で定められた10項目を実施しなければなりません。自社で体制を組めない場合は、支援の全部を登録支援機関に委託すれば、支援体制があるものとみなされます。

なお特定技能2号は、熟練した技能を要する業務が対象で、在留期間の更新回数に上限がなく、家族の帯同も認められ、支援義務もありません。長く働いてもらう前提なら、2号へ進める分野かどうかが効いてきます。

制度を選べても、採れるとは限りません

比較表には出てこないのに、実務でいちばん効くのがこの話です。特定技能には分野ごとに受入れ見込数が定められていて、政府の基本方針はこれを「外国人受入れの上限数として運用する」としています。定員がある、ということです。

入管庁が公表した令和8年6月末時点の速報値では、19分野の受入れ見込数の合計805,700人に対して在留者数は425,961人。全体の充足率は52.9%です。まだ半分と読むこともできますが、分野ごとに見ると景色が変わります。

分野受入れ見込数在留者数充足率
外食業50,00049,06098.1%
飲食料品製造業133,500100,76975.5%
建設76,00052,13268.6%
介護126,90079,88463.0%
宿泊14,8002,55617.3%

外食業は先に上限へ届きました。入管庁は令和8年3月27日に、受入れ見込数5万人に対して同年2月末現在で約4万6千人(速報値)に達したとして、2026年4月13日以降に受理した在留資格認定証明書交付申請は不交付とすると公表しています。すでに外食業分野で特定技能1号として在留している人からの転職等に伴う変更申請と、在留期間更新許可申請は通常どおり審査されます。

「制度上は使える」と「いま採れる」は別の話だ、ということです。自社の分野の充足率が高いなら、検討すべきは制度選びではなく時期の判断になります。

自社がこの状況なら、こちらになります

現場の作業そのものを任せたい|特定技能です。ただし選ぶ前に2つ確かめます。任せたい業務が19分野の業務区分に当てはまるか。その分野の枠が残っているか。ここが通らなければ、制度を変えても解決しません。

専門的な判断や知識を使う仕事を任せたい|技人国です。学歴と業務の関連性、または10年以上の実務経験が要件になります。人数の上限はありません。

通訳や翻訳をメインで任せたい|技人国ですが、2026年4月以降はCEFR・B2相当の言語能力が前提です。募集の段階で証明できる資格を持っているかを見ておくほうが早いでしょう。

長く働いてほしい、家族ごと来てほしい|技人国か、特定技能2号へ進める分野かで判断が変わります。特定技能1号のままだと通算5年で区切りが来ます。

現場作業だが、19分野に入っていない|どちらも使えません。ここで技人国に寄せようとすると不許可になります。育成就労の対象分野かどうかを含め、制度の外側から考え直すことになるでしょう。何が変わるのかは技能実習から育成就労で何が変わるかに書きました。

現場作業なのに技人国で採ろうとするのは、なぜ起きるのか

この取り違えは、知識が足りないから起きるわけではありません。募集の起点が職種ではなく、人手が足りない場所だからです。現場が回らない。求人を出しても日本人が来ない。そこへ大学を出た外国人の応募がある。学歴があるのだから技人国でいけるだろう、という順番になります。在留資格を決めるのは業務内容のほうで、学歴は要件の一部にすぎません。順番が逆になっている、というだけの話です。

「最初は現場を覚えてもらうだけ」という説明もよく聞きます。入社当初の実務研修そのものは認められる場合があります。ただし条件は細かい。今後その専門業務を行ううえで必ず必要な研修であること、日本人についても入社当初は同様の研修に従事すること。この2つが揃わず、研修の名目で在留期間の大半を現場作業に充てる計画は、不許可事例として公表されています。

不許可になったときに失うのは、申請の手間だけではありません。内定を出した相手と、その人を待っていた現場の時間です。採用が白紙に戻るコストの重さは、日本人の中途採用でも外国人材でも変わらない。この構造は転職の面接で見られている3つに書いたことと同じで、採る側は失敗の代償が大きいからこそ入口で慎重になります。

よくある質問

特定技能から技人国へ在留資格を変更できますか

変更の申請自体はできます。審査されるのは変更後の業務内容と、技人国の要件を満たしているかどうかです。学歴と業務の関連性、または10年以上の実務経験が必要になるため、現場作業のまま在留資格だけを付け替えることはできません。実際に該当するかどうかは個別の判断になりますので、行政書士や弁護士、地方出入国在留管理官署にご確認ください。

特定技能の外国人は自由に転職できますか

転職は認められていますが範囲があります。政府の基本方針は「同一の業務区分内又は試験等によりその技能水準の共通性が確認されている業務区分間」としており、分野をまたぐ移動は自由ではありません。受入れ機関または分野を変更する場合は、在留資格の変更許可申請が必要です。技能実習や育成就労と違い、企業を替えること自体は制度の前提に入っています。

技人国の人を中途採用するとき、在留資格の確認はどうすればよいですか

在留カードで在留資格と在留期間を確認したうえで、自社の業務がその在留資格に該当するかを確かめることになります。本人が就労資格証明書の交付を申請すれば、新しい勤務先での活動が在留資格の範囲内かを入管庁に確認してもらえる仕組みです。勤務先を変えた場合の標準処理期間は1か月から3か月とされているため、入社日の設計に影響します。

支援は必ず登録支援機関に委託しないといけませんか

義務ではありません。自社で支援体制を整えられるなら自社で実施できます。ただし支援は省令で定められた10項目に及び、外国人が十分に理解できる言語で対応しなければなりません。全部を登録支援機関に委託した場合は、外国人を支援する体制があるものとみなされます。一部だけの委託も可能。

制度は、求人票を書く前に決まっています

順番を戻すと、やることは3つです。任せたい業務を書き出す。それが特定技能の業務区分に当たるのか、技人国の専門業務に当たるのかを見る。特定技能なら、その分野の枠が残っているかを見る。ここまで済ませてから求人票を書けば、途中で在留資格の話に戻る手戻りがなくなります。

制度の改正は、この1年だけでも止まっていません。技人国の審査基準は2026年4月に改定され、在留手数料は10月に上がります。手数料の改定は在留手数料が最大20倍にという記事にまとめました。

個別の判断について

本稿は制度の一般的な解説です。個別の案件について、在留資格に該当するかどうかの判断や申請の可否をお答えすることはできません。具体的な事案は、行政書士や弁護士、または住居地を管轄する地方出入国在留管理官署にご相談ください。制度の全体像についてのご質問はお問い合わせからお送りいただければ、一般的な範囲でお答えします。

出典

  • 出入国在留管理庁「外国人労働者に関する制度概要」(制度説明資料)
  • 出入国在留管理庁「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について(最終改定 令和8年4月)
  • 出入国在留管理庁「特定技能1号の受入れ見込数及び在留者数について(令和8年6月末時点・速報値)」

※本稿は2026年9月時点の公開情報にもとづきます。

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