日本にいる外国人を採るほうが、海外から呼ぶより早い。外国人材の採用を考え始めた会社が、最初に受ける説明です。ところが出入国在留管理庁が毎月公表している在留審査処理期間をみると、2026年7月に許可された技術・人文知識・国際業務では、在留資格の変更は、許可が告知されるまで平均72.9日かかっていました。海外から呼ぶときの在留資格認定証明書は、交付まで49.8日です。
では、すでに日本にいる人を採ると、実際には何が短くなるのか。日本で働いている外国人のうち、勤め先を自由に選べるのは何人なのか。採ったあとで在留資格が付いてこない、という事故はどこで止められるのか。国内での転職という市場が立ち上がりつつある理由を、採る側が何に時間とお金を払っているのかという角度から扱います。
筆者は外国人材の採用に、企業側と候補者側の両方から関わっています。数字は2026年9月22日時点で公表されている資料によります。
転職が自由なのは、働いている外国人の4人に1人
厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況(令和7年10月末時点、2026年1月30日公表)から、在留資格別の内訳を抜き出します。
- 専門的・技術的分野の在留資格|865,588人(全体の33.7%)
- 身分に基づく在留資格|645,590人(25.1%)
- 資格外活動|449,324人
- 特定活動|111,074人
このうち、勤め先を選ぶのに在留資格の制約がないのは「身分に基づく在留資格」の645,590人です。永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者がここに入り、就ける職種に制限がありません。働いている外国人のおよそ4人に1人が、日本人と同じように職場を移れる立場にいます。
伸び方には差があります。身分に基づく在留資格は前年の629,117人から16,473人の増加で、率にすると2.6%。同じ期間に専門的・技術的分野は718,812人から20.4%増え、資格外活動は12.8%増、特定活動は29.6%増でした。
増えているのは、職場を変えるたびに手続きが要る層のほうです。国内で転職する外国人が増えているとしても、その中身は「自由に動ける人が増えた」ではなく「動くのに審査が要る人が増えた」になります。採る側から見れば、転職者の母数が増えるほど、手続きを自社で引き受ける場面も増えるということです。
残りの人が職場を変えるときは、間に審査が入る
在留資格は、人ではなく「日本で行うことができる活動」に付いています。だから職場が変わっても資格がそのまま使えるかどうかは、新しい仕事の中身しだいです。大きく3つの層に分かれます。
| 層 | 在留資格の例 | 職場を変えるとき |
|---|---|---|
| 身分や地位にもとづくもの | 永住者、日本人の配偶者等、定住者 | 就労できる活動に制限がない |
| 仕事の内容で決まるもの | 技術・人文知識・国際業務、技能、介護 | 許可された活動の範囲内なら在留資格はそのまま、範囲から出るなら在留資格変更許可が必要 |
| 分野や計画に結びつくもの | 特定技能、技能実習、育成就労 | 制度ごとに条件が決まっている |
本人の側には届出の義務があります。技術・人文知識・国際業務、技能、介護、特定技能などの在留資格で働く人は、契約機関との契約が終了したときと、新たな契約を締結したときに、その日から14日以内に出入国在留管理庁へ届け出ることとされています(所属(契約)機関に関する届出)。会社側の手続きではありませんが、入社手続きの案内に入れておくと本人が落としません。
採ったあとで「その仕事はこの在留資格では認められない」と分かる事故を、手前で止める道具もあります。就労資格証明書です。入管法第19条の2にもとづき、その人が行うことができる収入を伴う事業を運営する活動または報酬を受ける活動を、出入国在留管理庁長官が証明する文書とされています。申請は本人からの任意で、これがなければ働けないというものではありません。同じ条文で、提示または提出しないことを理由に不利益な取扱いをしてはならないとも定められています。つまり、出してくださいと頼むことはできても、出さないことを理由に落とすのは違います。
この記事で書けるのはここまでの一般論です。特定の人が特定の仕事に就けるかどうかの判断は個別の審査になります。自社の案件については、行政書士や弁護士、または地方出入国在留管理官署にご確認ください。
国内にいる人を採るほうが早い、とはかぎらない
出入国在留管理庁は、在留審査に実際にかかった平均日数を毎月公表しています。2026年7月に許可された分の数字です。
| 在留資格 | 認定証明書の交付まで | 変更の審査終了まで | 変更の許可告知まで |
|---|---|---|---|
| 技術・人文知識・国際業務 | 49.8日 | 63.3日 | 72.9日 |
| 特定技能1号 | 64.1日 | 44.0日 | 59.5日 |
| 介護 | 33.3日 | 20.0日 | 32.9日 |
向きは在留資格によって変わります。技術・人文知識・国際業務は国内での変更のほうが長く、特定技能1号と介護は国内のほうが短い。ひとまとめに「国内だから早い」とは言えません。
読むときの注意も同庁が付けています。4月の就職時期に向けて申請が増えるため、就労資格の審査期間は長くなる傾向がある。変更と更新の処分日は許可の告知時、つまり本人が入管局に出向く日なので、審査そのものは表示の日数より短い場合がある。7月許可分はこの両方が効いた月です。なお標準処理期間は、在留資格変更許可申請で1か月から2か月とされています。
海外から呼ぶ場合は、認定証明書が出たあとに在外公館での査証の手続きと渡航が乗ります。だから49.8日と63.3日を並べて「海外のほうが早い」と読むのも違います。確かなのは、すでに日本にいる人を採る場合でも2か月前後は見ておく必要がある、という一点です。もう日本にいるのだから来月から働けるはず、という前提で入社日を先に決めると、動かせない日付だけが残ります。
採る側が国内在住者に払っているのは、確かめる手間の少なさ
審査の日数が縮まないなら、採る側は何を買っているのか。短くなるのは、確かめるための往復のほうです。
- 対面で面接ができ、日本語のやり取りをその場で確かめられる
- 住まいと生活の基盤がすでにあり、渡航や住居手配の段取りが要らない
- 前職が日本の会社なら、職務内容も評価も日本の基準のまま読める
この層がどんな人たちなのかは、留学から就職へ切り替えた人の統計に出ています。出入国在留管理庁の「令和6年における留学生の日本企業等への就職状況について」(2025年11月公表)によると、就職を目的とした在留資格変更許可申請の処分は41,142件で、うち39,766人が許可されました。変更後の在留資格は技術・人文知識・国際業務が31,393人(78.9%)、特定技能1号が2,517人(6.3%)。職務内容は翻訳・通訳が12.5%、情報処理・通信技術が9.5%、管理業務が8.7%の順です。
月額報酬は20万円以上25万円未満が46.1%で最も多く、20万円未満が25.7%。新卒で日本の会社に入る日本人と、大きく違う水準ではありません。賃金が動きにくい構造は、国籍に関係なく同じところで効いています(人手不足なのに賃金が上がらない理由)。
採る側の作業としては、日本人の中途採用と別物ではありません。何を一貫性とみなし、どこで再現性を確かめるかという読み方はそのまま使えます(転職の面接で見られている3つ)。そこに在留資格の確認が1本増える、という理解が実際に近いはずです。
受け入れているのは、従業員100人未満の会社が半分以上
同じ資料から、就職先の規模を抜き出します。
- 従業員1人以上49人以下の企業等|40.9%
- 従業員100人未満まで含めると|55.8%
- 資本金500万円以下の企業等|27.3%
- 所在地が東京都|42.4%
厚生労働省の届出状況でも、外国人を雇用する事業所は371,215所あり、30人未満の規模が事業所数の63.1%を占めます(そこで働く外国人労働者は全体の36.1%)。大企業のグローバル採用という絵からは、かなり離れた場所で起きている動きです。
採り手が中小企業だということは、手続きの負担も専任の担当者がいない会社に乗るということでもあります。事務の仕事が減って人が現場側へ動く流れと、同じ場所で重なっています(事務から現場へ動くと何が変わるか)。
人材サービスが、海外からの送り出しより国内へ寄っている
紹介する側の数字も出ています。厚生労働省の令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報、2026年3月31日公表)です。
- 常用就職件数|約92万件(前年度比4.8%増)
- 手数料収入|約9,835億円(17.6%増)
- 常用就職1件あたりの手数料|約103万円(10.9%増)
- 国外にわたる職業紹介の就職件数|25,796件(42.3%増)
国外にわたる職業紹介は伸び率こそ大きいものの、件数は国内の常用就職の3%に届きません。海外から呼ぶ紹介は、市場としてはまだ小さい規模です。一方で1件あたり約103万円という単価は、採る側にとって外国人か日本人かに関わらず効いてくる数字です。
この約103万円が、どの法律にもとづいて、誰から誰へ、どんなときに動くのかは転職エージェントは、企業から何をいくらもらっているのかにまとめました。求職者から手数料を取れない原則と、成功報酬という形が、選考の進み方にどう効くかを扱っています。
その送り出し側にいた会社が、国内へ向き直り始めています。ONODERA USER RUNは2026年8月4日、在留外国人向け求人サービスを運営するGuidableの全株式を取得したと発表しました。リリースは理由をこう書いています。「外食分野等における特定技能の受け入れ枠調整や受入れ一時停止といった環境の変化に伴い、従来の『海外からの新規受入れ』だけでは企業の雇用ニーズを維持・拡大することが困難になりつつあります」(ONODERA GROUPのニュースリリース)。
分野ごとの受入れ枠が埋まると、海外から新しく呼ぶ蛇口が細くなります。細くなった分の需要は、すでに日本にいる人の中で動かすしかない。日本在住の外国人を対象にした転職支援が事業として立ち上がっているのは、善意や多様性の話というより、この行き場のつけ替えです(枠と上限の話は事務から現場へ動くと何が変わるかで扱っています)。
日本にいる人を採るかどうかは、時間と手間のどちらを引き受けるかで決まる
- 勤め先を自由に選べるのは働いている外国人の25.1%で、残りは在留資格の条件の中で動く
- 国内にいるからといって審査が軽くなるわけではなく、技術・人文知識・国際業務の変更は審査終了まで63.3日
- 国内で短くなるのは審査の日数ではなく、確かめるための往復のほう
- 受け入れている側の半分以上は、従業員100人未満の会社
入社日を決める前に、出入国在留管理庁の在留審査処理期間の最新月を開いて、自社が採ろうとしている在留資格の行を拾っておいてください。数字は毎月入れ替わります。ここを見ないまま日付だけ先に決めると、動かせない予定と動かせない審査が正面からぶつかります。
よくある質問
日本にいる外国人を採れば、在留資格の手続きは要りませんか
在留資格によって変わります。永住者、日本人の配偶者等、定住者などの身分に基づく在留資格は就労できる活動に制限がないため、日本人と同じように入社できます。技術・人文知識・国際業務などの就労のための在留資格は、新しい仕事が許可された活動の範囲内であれば在留資格はそのままですが、範囲から出る場合は在留資格変更許可が必要です。また本人には、契約機関との契約の終了と新たな契約の締結について、14日以内に出入国在留管理庁へ届け出る義務があります。個別の案件が範囲内かどうかの判断は、行政書士や弁護士、地方出入国在留管理官署にご確認ください。
採用してから在留資格が認められなかった、という事態は防げますか
就労資格証明書という制度があります。入管法第19条の2にもとづき、その人が行うことができる収入を伴う事業を運営する活動または報酬を受ける活動を、出入国在留管理庁長官が証明する文書です。転職先の仕事をその在留資格で行えるかを、雇う側が確認しやすくするための仕組みとされています。ただし申請は本人からの任意で、提示または提出しないことを理由に不利益な取扱いをしてはならないと同じ条文に定められています。取得をお願いすることはできますが、出さないことを理由に不採用にはできません。
国内で採るのと海外から呼ぶのとでは、どちらが早いですか
在留資格によって逆になります。出入国在留管理庁の在留審査処理期間(令和8年7月許可分)では、技術・人文知識・国際業務は在留資格変更の審査終了まで63.3日、海外から呼ぶときの在留資格認定証明書の交付まで49.8日で、国内のほうが長い数字でした。特定技能1号は変更44.0日に対して認定証明書64.1日で、逆になります。ただし認定証明書が出たあとには在外公館での査証の手続きと渡航が加わります。どちらの道でも2か月前後は見ておくのが実際的です。
外国人の転職が増えているのは、人が余ってきたからですか
母数の増え方が変わったから、と見るほうが近いです。厚生労働省の届出状況(令和7年10月末時点)では、身分に基づく在留資格が前年比2.6%増にとどまる一方、専門的・技術的分野の在留資格は20.4%増、特定活動は29.6%増でした。動くたびに手続きが要る層が速く増えています。加えて、特定技能の分野別の受入れ枠が埋まって海外からの新規受入れが止まった分野があり、その需要が国内在住者に向かっています。
出典
- 厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)(2026年1月30日公表)
- 出入国在留管理庁「在留審査処理期間」(令和8年7月許可分)
- 出入国在留管理庁「留学生の日本企業等への就職状況について」(令和6年分・2025年11月公表)
このほか、厚生労働省「令和6年度職業紹介事業報告書の集計結果(速報)」(2026年3月31日公表)、出入国在留管理庁の就労資格証明書および所属(契約)機関に関する届出の案内、ONODERA GROUPのニュースリリース(2026年8月4日)を本文中で参照しています。制度の一般的な説明までを扱っており、個別の在留資格該当性についての判断は行っていません。

